Wall Street

何かの文章でこの映画 (Wall Street 1987)のことを論じていたので、どんな映画だろうと思って見たくなった。1985年、野心に溢れた証券会社勤務のバド・フォックスの憧れは、投資銀行社長のゴードン・ゲッコーだ。フォックスはキューバ産の葉巻きをもって、ゲッコーの誕生日の日に面会に成功した。ゲッコーを喜ばせたのはフォックスがプレゼントした上質のキューバ製葉巻きではなく、フォックスの父が働く航空会社の内部情報だった。フォックスは、航空会社の整備技師として働く父から経営状態がおもわしくないことを聞き、それをゲッコーに流した。ゲッコーはこの航空会社の買い取りを画策する。とともに、フォックスに株取引の極意を仕込む。フォクスは社内で出世し、女を手に入れ(ゲッコーのパーティーで知り合った女、ゲッコーの息がかかっている)、いよいよ父の航空会社の株買い占めの時がやってきた。父はゲッコーの再建プランを拒む。

こういう話だが、マイケル・ダグラス演じるゲッコー、若いフォックスに"sport"と呼びかけるのは、フィツジェラルドの「グレート・ギャツビー」のギャッツビーと同じ。ギャッツビーとゲッコーは似ているといえば似ている。航空会社の株主総会で、"Greed is right"と堂々と言ってのけるあたりは、信念がブレていないという点でかっこいい。こんなゲッコーに利用されているだけのフォックスは、無垢な青年の域を出ない。抽象的にしか成功ということを考えてなかったので、色気を出して自分あたまたま持っていた父の会社のインサイダー情報をゲッコーに提供したことで出世したのはいいが、所詮利用されているだけだということに気付くのが遅過ぎる。懺悔改心して、ゲッコーの買収プロットを転覆させて意気揚々としていたら、インサイダー取引の容疑で逮捕されてしまう。フォックス自身、そして父も、フォックスの行動によって会社乗っ取りを免れたのだから、フォックスの逮捕は英雄的行為だと信じる。最後は、激情したゲッコーがフォックスを殴るのだが、フォックスは服のしたに録音機を隠していた。それを証拠にゲッコーも逮捕されるシーンは映画にはなかったが、必然そうなるのだろう。

航空会社の経営権が変わらなかったからよかったというのは論理的ではない。この後この会社の経営がどうなるのか知らないが、経営陣が変わった方が建て直しがうまくいくことはある。そういう可能性を排除して、マネーゲームを始終批判しているフォックスの父に最後には説得されたフォックスのセリフが"I am just Bud Fox"。こんな左翼根性丸出しの映画を作った監督は誰だと思い、パッケージを見ると、オリバー・ストーンだった。