Detroit at Seattle

延長15回表、投手のやりくりに困ったマリナーズが、控え捕手のバークをマウンドに立たせたという、引き分け規定のないメジャーリーグならではの面白い試合だった。犠牲フライで点を取られて試合は負けたのだが、1回を投げ切って1点しか取られなかったのだからたいしたものだ。ESPNの記事によると、14回裏のマリナーズの攻撃中、次の回に捕手のバークをマウンドに立たせることを知ったイチローがリグルマン監督のもとに歩み寄り、自分が投げますと志願したそうだ(ESPNは、8年連続オールスター選手のイチローが投げた方が盛り上がって良かったのにと、残念そう。くしくもオールスターの出場選手が今日決まった。)。他にも投げたいと申し出る野手が二人いたが、リグルマン監督はマイナーリーグでじっさい投げた経験のあるバークを指名した。

それで、最初のバッターは強打者カブレラ。記事によるとカブレラは打席に立つ前、かりそめのピッチャーだからといって力んで強振しないように、コンパクトにボールを叩くことを意識したそうだ。結果は二塁打。ワイルドピッチで三塁に進んで、テムズが犠牲フライ。

15回が始まる前の時点で、シアトルのブルペンにはあと4人の本職ピッチャーが残っていた。本来なら、中継ぎのローズが投げるべき場面だったが、寝違えて投げられる状態ではなかった。同じく中継ぎのモローは直近5試合中4試合に投げていたので、この日は休ませたかった。あとの二人は先発要員で、シルバは火曜日の先発だし、ディッキーは昨日投げたばかりだ。

日本のスポーツ新聞のウェブを見ると、バークを投げさせたことに対して、不可解な采配とか、ローズはふてくされて、ベンチはしらけていたと書いているが、何を見てそんなことを書いたのだろう。ぜんぜん不可解ではない。理にかなっている。惜しむらくは、ESPNも書いたように、このまたとない機会に、スーパースターのイチローを投げさせる遊び心がシアトルの監督になかったことくらいだろう。そのイチローのコメントが引用符つきで紹介されている。

  "I said I wanted to. I asked," Suzuki added.

普段は、冷静で、はすに構えたようなコメントしか出さないイチローだが、この時ばかりは平常心ではいられなかったのではないか。