[movie] High School (dir. by Frederick Wiseman)

7時からは図書館で、High School(1968)という映画を見た。これはドキュメンタリー映画で、Frederick Wisemanという人の監督作品だ。フィラデルフィアの中・上流階級の生徒たちが通う公立高校の様子を撮ったものだったが、手法的には、小型カメラを肩に担いで、クロースアップを多用し、編集では音楽なし、ナレーションなし、これみよがしの演出なしという印象だ。専門語ではこういうやり方をdirect cinemaというらしい。

さて、"High School"の中身はというと、簡単に言えば、高校という制度における教師対生徒という支配関係を、国家全体の支配構造のミニアチュアとしてとらえている。だから、いわゆる若者映画ーー50年代のJames DeanやPresley, Marlon Brandoーーのように、"High School"の高校生たちは反抗しない、抵抗しない、議論しない。ひたすら悲しく、狂おしいまでに従順だ。1968年だから、アメリカはヴェトナム戦争があり、ピル論争があり(避妊用のピルは1960年から製造された。中絶を禁止する州法を違憲とした最高裁判決が出たのは1973年のRoe v. Wade)、フェミニズムの思想がいろいろな形で表現されて(ミスコン反対とか、NOWその他の団体が組織されたり)、その一方で保守たちの抵抗もしっかりあった。メディアだけ見ていると、つい目新しくて奇抜なものばかり見てしまうが、現実のアメリカの1968年は、どこもかしこもヒッピーやカウンターカルチャーで盛り上がってたわけではないのだ。むしろ、この高校の教師たちのように、個性的であろうとする生徒たちを縛りつけるのが普通だったのだ。

初出エキサイト 1/27/2006 FRI http://takebay1.exblog.jp/3094688/