「フルメタル・ジャッケット」

7時から大学で映画を見た。Full Metal Jacket (1987)という作品。キューブリック監督のヴェトナム映画だ。前半はサウス・キャロライナ州のParis Islandにある海軍訓練所の生活(Billy Joelの"Goodnight Saigon"(1982)にも歌われている)、後半はそこを卒業した兵士たちが、ヴェトナムに赴いて任務を遂行する様子を描いている。前半は、仲間の足かせになる一人の訓練兵が見もの。後半は、やはりラスト・シーンかな。1987年の公開だから、すでにアメリカ人はベトナム・シンドロームとか騒いでいたわけだけど、さすがキューブリック、おセンチにならず、物分かりのいい大人のふりをして教訓めいたことを垂れるわけでもなし、戦争という装置の中で人間がどう振る舞うかというサイコに焦点を当てている。そういう意味では、これはヴェトナム映画というよりは、広く戦争映画と理解したほうがいいだろう。それでもあえて、舞台をベトナムにしたことで、自己憐憫的になっていたアメリカ人たちに喝を入れたような効果はあったと思う。

こういう映画は、見て気持ちがすっきりする。なにも戦争でバタバタ人が死ぬことに快感を覚えるとかいう意味じゃなく、人間なんてそんなものさ、環境一つでどうにでも精神が変形してしまう生き物なんだよ、と冷たく突き放されるような清々しさがある。

初出エキサイト 1/26/2006 Th http://takebay1.exblog.jp/3093779/