発音強化をしたい人のための英語辞書アプリ(メリアム・ウェブスター)

メリアム・ウェブスターが最近、音声認識機能付きのアイフォン/アイパッド用英語学習辞書アプリを発売した。通常の辞書は、単語のスペルをタイプして知りたい語を引き出すが、音声機能付きの本アプリは、その単語を発音すると音声認識によってその単語を表示してくれる(辞書のサンプル発音を聞くのではなく、自分で知りたい単語を発音する)。ようするに、Siriのような使い方で単語を調べるわけである。とうぜん、発音が違ったりすると、別の単語が出てきたり、「認識できませんでした」というメッセージがあらわれるので、発音の練習にはもってこいのアプリだ。

それで、このアプリを英語のクラスで導入してみた。アイフォンを持っている受講者にインストールしてもらって、数人で一台の割合で、順々にその日の重要単語を発音させ、正確な発音を学ばせようという意図である。アプリ自体のサンプル発音も聞けるので、自分の発音とアプリの発音を比べて、違いを自己分析することもできる。自分の発音した語が出てきたら嬉しいし、はずれたらがっかりで、たのしく取り組める練習だと思った。

ただし、実用的には問題もある。まず、認識のレベルが、厳しい。これはメリアム・ウェブスターが教育的配慮であえて厳しくしているということではなく、純粋に音声認識の技術的な問題だと思う。私が受講生の発音を耳で聞いていて十分通じる発音だと思っても、アプリは認識しないことがよくある。これでは受講生の自信を不必要にそぐことになりかねないので、指導者は「今の発音で大丈夫ですよ」とフォローをする必要がある。それから、回線の問題で、認識するのに数秒待たされる。もう一つは、私のクラスでの話だが、アイフォン所有者が全体の5分の1から6分の1程度であり(現在はアイフォン版のみ。アンドロイド版はない)、待ち時間が増えてしまう。せめて3人で1台くらいでないと練習する機会が十分確保できないと思った。

とはいえ、個人で練習するには十分使える。たとえば、認識が厳しめだという特徴を利用して、自分の気づかなかった癖を知ることができる。例えば、私が気づいたのは、二重母音をもうすこしはっきり出した方がいいようだということで、そういう意識をもって話すように気をつけだした。

本アプリは無料版と有料版(450円)がある、違いは、広告の有無と、例文の数の違いの二つ。売りである音声認識機能は無料版でも使える。本アプリの元データは、紙版のMerriam Webster’s Advanced Learner’s English Dictionaryであり、もっとコンパクトな紙の英英辞典がほしい人には、ペーパーバック版もある。