Cleveland at Boston (Game 7)

第7戦は結果だけを見れば大差がついたが、ほんのちょっとしたことが勝敗を決した。7回表のインディアンズの攻撃で1点取って同点になるはずだったが、点が取れず。その裏の守備で、表の攻撃でダブルプレーの内野ゴロを打ってしまった三塁手ブレイクが、飛んできたゴロをエラー。そこから傷口を広げてホームランでとどめを刺された。7回表のミスとは、選手のミスではなく、三塁コーチの判断ミスだった。二塁にランナーがいて、三塁線上をぎりぎり抜けたヒットで、ボールがフェンスに当たってレフトの前に転がった打球に対して、二塁からやって来たランナーを本塁まで走らせるかどうかの判断で、三塁で止めさせてしまった。1点差で負けていて7回の攻撃、1アウト、二塁から走ってきたランナーは普通の足の速さのロフトン、そしてボールが転がったレフトを守っているのが守備の下手なラミレス。ラミレスがボールを捕った時点でロフトンは三塁ベースを蹴っていた。三塁コーチは、いろいろな状況を事前に頭に入れているはすだが、以上の状況だけでも、ランナーを本塁へ突っ込ませる価値もセーフになる確率もあった。さらに、ボールはフェンスに当たってレフトからセンター方向へ転がっていった。普通のレフト前のヒットだったら、ボールが飛んできた本塁方向へ走っていき、タイミングを合わせて本塁へ投げればいい。だが、このときは、打球の勢いが死んでいるので、助走が使えない。繰り返すが、守備の下手なラミレスだ。仮に本塁でアウトになっても、打者走者は二塁まで進むので、二死二塁の状況になっていた。3点差ぐらいの状況なら、無理をしないでランナーを貯めるという作戦はあり得るが、1点差で同点の好機で慎重になってしまったのはがっかりだった。その後どうなったかというと、一死一塁三塁で、9番ブレイクが初球を打ってダブルプレー。終わり。初球を打つ前に、一塁ランナーを二塁に盗塁させて、ダブルプレーの可能性を少なくしてから、ブレイクに打たせるという作戦をベンチは考えなかったようだ、ダブルプレーの責任を引きずったのか、ブレイクは直後の守りでエラー。それがレッドソックス本塁打を打たれるきっかけになった。

試合が終わった後もしばらくテレビを見ていた。テレビは当然のことながら、ボストンの選手たちを映すわけだが、数秒だけベンチにいるクリーブランドの選手たちを映した。なんかあれだね、人間って喜び方は一様だけど、悲しみ方って人それぞれだ。テレビに映ったクリーブランドのベンチは、荷物をまとめてロッカールームに行く人と、ベンチから動けない人の二つに分かれた。ベンチから動けない人はさらに二つに分かれる。放心状態で視点が定まらず顔の筋肉が完全に弛緩している人と、視線をレッドソックスの選手の歓喜の輪の方に置いたまま固定させている人。泣いていた人もいた。ぼくならどういう行動をとるのだろう。わからない。そういう状況になってみなければ。

さらにテレビを見ていると、レッドソックスの祝賀会の部屋にカメラが切り替わった。レッドソックス球団のお偉方がテレビ向けにひと言ずつコメントしたが、オーナーのジョン・ヘンリーが、「ボストンのファン」とは言わず、「ニュー・イングランドのファン」と言ったのは、さすがにオーナーらしく気配りの行き届いた言い方だった。気配りといえば、試合終了直後のグランドでテレビ・リポーターがボストンの2,3人の選手に短いインタヴューを行った。うち一人がキャプテンのヴァリテックだったが、彼はいきなり、「インディアンズは素晴らしいチームだった」と言った。優勝を決めてまだ2分ぐらいしか経っていないのだから、敵のチームのことなんて頭から抜けていてもいいのに、やっぱりキャプテンを任される人は言うことが殊勝だ。キャプテンの資質とはこういうところに表れる。ヤンキースのキャプテン、ジーターも、二年前の国別対抗野球で、アメリカが負けたときのコメントで、普段対戦しないおおぜいの他国の選手と野球ができてよかった、というようなことを言ったのを覚えている。勝ったとき、それから負けたとき、ようするに通常とは違う状態に置かれたとき、どう行動・発言するのかでその人の普段は見えてこない本質的な部分が見えてくる。

応援していたクリーブランドが負けてしまったのは残念だったけど、今日も7回までは引き締まったいい試合だった。今シーズンはあまり野球を観なかったので、10月はこうして毎日のように野球を見れること自体が嬉しい。あと少なくて4試合、多くて7試合か。どっちかといえば、コロラド・ロッキーズのほうに気持ちが入るが、全然知らないコロラドの選手たちを見れるのが一番の楽しみだ。