"Festival!"

タイトルが曖昧でなんのヴェデオか分からないけど、これはニューポート・フォーク・フェスティバルのドキュメンタリー・フィルム。1963年から66年の4回分の映像を編集している。年代順の編集ではなく、ひとつのストーリーのような感じに見えるように編集している。したがって、歌をノーカットで聞かせるのではなく、50人くらいのフォーク・シンガーの映像をつなぎ合わせて90分にまとめている。歌をじっくり聞きたい人には不満かもしれないが、当時のフォーク文化を感じ取るには最適の編集方法だと思う。

このドキュメンタリーを見て分かることは、フォークという音楽の幅の広さである。ギターとハーモニカで歌うのだけがフォークではない。ニューポートではブルース、ヒルビリーエスニック、ゴスペルなどの演奏者も呼ばれて、すでに有名だったバエズ、ディラン、PPMジョニー・キャッシュたちと共演した。フォーク・ファンは、これらの多様性を楽しみ、また同時にヒット・チャートのポップ・ミュージックにはない真摯性と表現的自由を享受した。

ニューポート・フォークで有名すぎるほど有名なエピソードは、65年のディランの「マギーズ・ファーム」だろう。ディランはエレキ・ブルース・バンドを引き連れて演奏したところ、大ブーイングを受けたという話。でもこれはエレキ演奏に対するブーイングではなく、PAの調子がおかしくてディランのボーカルが聞こえなかったことに対するブーイングというのが真実だ。このDVDには本番の演奏はもちろん、リハーサルの映像も少し入っている。

63年から66年という期間は、British Invasion と重なる。50年代のアメリカン・ロックンロールを聞いて育ったイギリスの若者たちが、さらにアメリカの黒人ブルースを吸収し、それをエレクトリック・スタイルで自分たちの音楽として発表した。ストーンズ、アニマルズ、ビートルズのロックンロールはアメリカの若者に自分たちのルーツ音楽を再認識させると同時に、ロックンロールの原点をも再確認させた。

ケースの横顔の写真はマリー・トラバース(PPM)。ジョアン・バエズがどちらかといえば歌姫みたいな感じで、抑制を効かせた伝統的な歌い方だったのにたいし、トラバースはソウルのように歌い上げる特徴があった。マリーは今はぶくぶくに太っているけど、このころは本当に美しい。


初出エキサイト 10/17/2006 TU http://takebay1.exblog.jp/4524972/