"Salt of the Earth"

Salt of the Earth (1954)は、労働争議を描いたドキュメンタリー映画だ。ニュー・メキシコ州の炭坑で、メキシコ移民の労働者たちがストを起こした。目的は白人労働者と同等の扱いを求めるとうものだ。最後は経営者側が譲歩するのだが、この映画の面白いのところは、組合対経営者のやりとりよりも、メキシコ系アメリカ人労働者とその妻たちの関係だ。1950年代のアメリカ白人中流階級の既婚女性といえば、夫の従属的存在で郊外の家に住み、お仕着せの生活を余儀なくされたとひと括りにされて語られることが多い。このことを念頭においてこの映画の女性たちを見ると、白人アメリカ人の妻たちとは正反対であることがわかる。夫たちは妻たちまで争議に関わることを嫌がるのだが、女たちは夫たちに成り代わってデモ行進をして、その間夫たちは洗濯物を干したり料理を作るというこっけいなシーンもある。そういう意味ではフェミニズムの先駆的作品と言うこともできる。

このドキュメンタリーを撮ったハーバート・バイバーマンは、赤狩り目的のHUACの公聴会で、修正憲法第1条(言論の自由)を盾にして発言を拒否した10人(「ハリウッド・テン」と呼ばれている)の一人だ。当然この映画自体も公開禁止の扱いを受けた。

初出エキサイト10/6/2006 F http://takebay1.exblog.jp/4470680/