雨月物語
溝口健二「雨月物語」(1953) を見た。時は戦国時代。二組の兄弟夫婦の運命を描いている。兄のゲンジューローは混乱の世に乗じて、陶器を売って大儲けを企む。弟のトーベーも、やはり戦乱の機を活かして、侍になることを夢見る。二人が家を空けて町に出かけているとき、トーベーの妻が野武士に強姦される。そしてトーベーは、他人が刈り取った敵軍の将の首を横取りして、それを自分の手柄だと報告して、本当に侍になる。旅の途中で立ち寄った宿場でトーベーは、身を落として遊女となった妻と再会する。トーベーは妻ともう一度やり直すことを決意する。いっぽうゲンジュウローは、買ってくれた陶器を届けに屋敷に行くと、そこに住む美女に気に入られ、結婚してしまう。ところが、しばらくたったある日、尼僧から、その女は信長に殺された一族の亡霊だと聞かされる。ゲンジュウローは、妻子のいる故郷に帰ることを決意する。帰ると、妻と子どもが暖かく迎えてくれる。しかし翌朝、名主がやってきて、妻は殺されたことを聞かされる。昨日見た妻は幻だったのだ........。最後は、兄弟とトーベーの妻は、力を合わせて、元の質素な暮らしに励むのだった。おしまい。
映像的には美しい。カメラをゆっくりと回すシーンがきれいだ。黒沢の時代劇とは違って、展開や台詞回しがが遅いのでいらいらする気がしないでもないが、映像としては丁寧に撮っている。ストーリー的には、人間が持つ欲というものに対して、どう折り合いをつけるか、がテーマかな。あるいは、人生の中で抱え込まざるをえない幻というものをどう理解するのか。
初出エキサイト 2/28/2006 TU http://takebay1.exblog.jp/3291813/