ビートルズは異次元に格好よかった:エド・サリヴァン・ショーのDVDセット

アメリカ人気テレビ番組「エドサリヴァン・ショウ」に、ザ・ビートルズが出演した4回分を納めた2枚組DVD。1964年。アメリカでザ・ビートルズがお披露目となった記念すべき番組。

このDVDを買う人のほとんどはビートルズ目当てだと想像するが、意外とビートルズ以外の部分が面白いし、時間的にも多い。ビートルズの演奏は全体の3分の1から4分の1だから、ビートルズ以外をいかに楽しむかがこのDVDセットの鑑賞価値を決める。

エドサリヴァン・ショーは、1948年に始まり1971年まで続いた長寿番組で、アメリカのテレビ史に関する本を読めば、この番組のことは必ず載っている。エドサリヴァンというホストによるエンターテインメントてんこ盛りの60分番組だった。日曜日の夜に全国放映された。

メインは歌だった。有名歌手はたいていこの番組に出ている。古くは、エルビス・プレスリーが何度も登場した。また、モータウンシュープリームスとかも何度も出演した。一見したところ、白人エンターテイナーしか出れなかったかのような印象を受けるが、モータウン系だけでなくけっこう黒人歌手にもオファーを出した。

このDVDに収録されている4回分の放送では、歌はもちろん、手品、物まね、ミュージカル、二人組コント、屋外で高いポールに登る曲芸(録画)、そのほかにもいろいろあって幅広い。

ビートルズは最初と最後に登場して、間を他のいろいろなエンターテインメントで埋めるという構成になっている。通して見ると、ビートルズの斬新さが、(今の学生の言葉を使うと)やばい。他のエンターテインメントが古くさく見えて仕方ない。コントだって、物まねだって、ミュージカルだって面白いのだが、ビートルズの音楽のかっこよさは、異次元のエンターテインメントだったってことがよく分かる。ビートルズが(あるいは1950年代後半のプレスリーが)登場する前も、エンターテインメントの王道はやはり歌だったけど、疾走感というか情熱のほとばしりみたいな感覚を出す歌ではなくて、成熟した感じでナット・キング・コールとかが歌うタイプが主流であり、ベビーブームの60年代は時代が変わったことを感じさせる。

それから、番組の間に流れたコマーシャルもそのまま見ることができる。冷水でも洗浄力が落ちない洗剤、電子レンジでチンするだけのクロワッサン、頭痛薬、リプトン紅茶など。なんだか、大量生産、大量消費の片鱗を覗いているようで味わいがある。

あと、細かいことだが、サリバンがエムシーで、ソビエトネタで冗談を飛ばすシーンが2回ほどあり、そういう時代だったんだと考えるとこれまた面白い。冷戦という時代だったってことになっているけど、60年半ばまで来れば、こういうお気楽なギャグをとばせるほどにアメリカ人は余裕がでてきたというわけ。