和解成立

フィラデルフィア地方裁判所から郵便が届いた。心当たりはもちろんないのだが、以前住んでいた州なので、そのとき何か悪いことでもしたのだろうか、それにしてもなぜ今ごろになって、と少しどきどきしながら封を開けた。太字で書かれた3つのrefund(返金)の文字が目に飛び込んできたので、自分にとって損な内容ではないと分かり、まずは安心。何の返金かというと、クレジットカードを海外で使用した時の手数料について、マスターカード、ヴィザなどのカード会社がその詳細を明らかにせず利用者から徴収しているとして誰かが集団訴訟を起こし、今回カード会社側と和解が成立したので、ぼくは原告の一人として返金請求する権利があるので、希望するなら手続きをとってくださいというお知らせだった。

過去11年間にわたる利用が対象になっており、返還請求の方法として、海外使用の頻度によって、3つの選択肢が用意されている。どれをえらぶかは完全に個人に任されている。一番頻度が少ない人用には一律25ドルの返金を受けられるオプションがあり、これだと住所、名前、署名だけで書類記入が完了する。つぎの、まあまあの頻度の人用の書類は、住所、名前、署名に加えて、過去11年間でアメリカ以外で過ごした推定日数を記入して、旅行目的別にその頻度を5段階で示すだけで終わり。最後の高頻度用の書類でも、海外でのカード利用額を年ごとに記入するだけ。記入した数字を裏付ける書類を提出する必要はない。

たしかに、海外でカード利用した時の手数料は高いとは思っていたが、そういう規約なのだろうと深く考えないでいた。さて、どのオプションを選ぼうかと迷ったが、真ん中のオプションを選んだ。いくら返金されるか分からないが、オプション選択の説明書きによれば、この真ん中のやつがぼくのカード利用の実情に近かった。だから、一番頻度の少ない人用の25ドルよりはたくさん戻ってくると思うし、いくら戻ってくるのかお楽しみという要素もある。

おそらく、この裁判はカード利用者が起こしたのではなくて、やり手の弁護士が小さな文字で印刷されたカード規約の条文を400パーセントに拡大コピーして、黄色のマーカーを手に持って、一字一句読んで、条文の穴を見つけて、これは勝てると判断して集団訴訟を起こしたのだと思う。なぜそう思うかというと、この手紙に付いてきた、和解に至るまでの簡単な経緯と幾つかのFAQのページを読むと、カードの海外使用時の手数料に関する同様の裁判は全米各地で20ぐらい行われているとあるからだ。つまり、さすが弁護士というべきか、カードの利用規約を読んで、これはいける、一儲けできるぞと考えた弁護士が全国にたくさんいるということだ。

FAQの一つに、この和解で原告側弁護士はいくらの報酬がもらえるのかという質問があるのは面白い。まず、和解総額は、336,000,000ドル。そこから事務経費を引いた額が約313,000,000ドル。弁護士側の要求額は、この額の27.5パーセントの約86,000,000ドル。いったい何人で弁護士チームを組んでいるのかは知らないが、このような金額を要求している。

集団訴訟の手続きはなるほど、まず少数で原告団を形成(原告代表団は20名だと書いている)して訴訟を起こし、和解成立したら、ぼくのような潜在的原告有資格者すべてに連絡するという手続きをとるということがわかった。これはしかし、物凄い数の人が原告の対象になる。過去11年間で、アメリカで発行されたクレジットカード(Visa, Master, Diners)を海外で使用した人はもちろんのこと、海外で一度も使用したことがない人でも今回の和解の恩恵を受けられるとある。それから、もしこの和解に納得いかなければ異議を唱えてもいいし、原告資格を放棄することもできる。

感心したのは、返還手続きがウェブでできること。もちろん送られてきた書類に記入して郵送してもよいが、指定されたURLに行って、自分のrefund IDを打ち込むと、ぼくの名前、住所等が現れて、あとはオプションを選択して、必要事項を打ち込めば全て完了。しばらくしたら小切手が送られてくると思うので、いくら戻ってくるのか楽しみだ。