手際よく

注目を集めた大統領選挙から一週間が経ち、次は組閣に注目が集まっている。特に財務長官は重要な選択だが、候補に上がっているローレンス・サマーズはやめたほうがいいと思う。やっぱりあの女性に関する舌禍事件でハーバード大学学長を辞めたという印象が世間的に強い。優秀な人材はいくらでもいるのだから、あえて火中の栗を拾うようなことはしなくてもいい。それから、間違ってもアル・ゴアに環境関係で要職を与えないことを望む。例のあの映画を見ていらい、事の是非はともかく、政治家として立ち回りが相当下手な人ではないかという印象を持っている。

先週の選挙では、大統領のほかにも、それぞれの州の上院議員や、州内の各行政区の代議員、州立大学の理事なんかも投票した。ほかにも、州個別の懸案事項を投票によって決めた。ミシガンでは、医療目的でマリワナの栽培・使用を認めるかどうか、ヒトの幹細胞研究を禁止する現行州法を修正するかどうかの二点について投票をした。どちらも可決されたようだ。大統領や上院議員、行政区の代議員を投票するというのは、ある意味、抽象的な判断になるので、誰でもいいやとか、誰に投票すればいいのか判断の決め手がないとなりがちだが、幹細胞実験とか医療用マリワナとなると、個人個人がはっきりした意見をもつので、投票に行こうという動機が高まるかもしれない。別の州では、環境分野の財源確保を目的にsales taxを0.3%くらい引き上げるかどうかを、今回の住民投票にかけた。可決されたそうな。(全部の州でどんな事案が選挙にかけられたのか一覧できるようなサイトがどこかにないかと思って探したけど見当たらない。)

大統領選のついでにと言っては明らかに語弊があるが、この仕組みには、一度にいろんなことを済ませてしまおうというアメリカ人の合理性が見て取れる。また同時に、政治というものが、国レベル、州レベル、市レベルにおいて存在していることを有権者に再確認させる。税金引き上げや幹細胞実験の是非なども投票で決められるのは、正直うらやましい。

一方、こちらでは、給付金をどうするかでもめている。この種のお金というのは、誰がもらえて誰がもらえないということが重要なのでなく、すみやかに実行することが大事だ。要するに、どちみち小遣い程度の額、あげればいいではなくて、スマートに渡してもらいたい。ここまでもめにもめたお金なんか、もらっても有り難みを感じられない。これはたんに気持ちの問題だけではない。突然手に入った小金はすぐに使ってしまうのが人間の性というもので、これこそが消費拡大で景気を少しよくしようという政府のもくろみであるはず。ここまで政府内の意見の食い違いを見せられた後では慎重になってしまい、結局は使わずに貯蓄という流れになること必定。アメリカでも今年、同様の措置がとられたが、その時は、銀行口座に自動的に(ようするに、こちらが何もしなくても)振り込まれた。しかも600ドルも。こういう点でも、選挙と同様の手際の良さが光る。事務処理的な部分で余計な手間ひまをとらないという合理主義は、アメリカの強みである。