リオ#1:ブラジルにまつわるイメージ

リオに来て五日目。いくつか思ったこと、見たことをまとめて書いておきたい。今日は、ブラジルに関するイメージと、実際に見てみた感想について。

ブラジルと聞いて、思い浮かぶことはいくつかあるが、その一つはコーヒー豆の輸出国だということ。なのでブラジル人はコーヒーをもしかしたら水代わりに飲んでいるのではと勝手な想像をしていたが、全然違った。たしかに街のいたるところにコーヒーを飲めるお店はある。でも種類が多いわけでもないし、安いわけでもない。特別新鮮な豆を使っているということもなさそうだ。スーパーには、ひいた豆のパックやインスタントコーヒーが売っているが、安い品物ではない。お土産用に豆とインスタントをそれぞれ買ったので、日本に戻ったら飲んでみるが、普通の味だと思う。コーヒー豆と、嗜好品としてのコーヒーは別物。リスボンに行ったときは、コーヒーは安かったし、カフェの数が半端ではなかったので、なんとなく同じような光景をリオでも期待していたが、期待がはずれた。

他に思いつくことは、BRICsとしてのブラジルで、2014年はワールドカップ、2016年はオリンピックと巨大イベントを二つも続けて開催するので、ものすごいインフラ需要があるのだろうなということ。リオの中心からフェリー(通勤用のフェリー)で20分ぐらいのいわゆるベッドルーム・タウンに泊まっているのだが、今朝は周辺をジョギングしてみた。海岸沿いの眺めのいい場所には中流層向けの高層アパートがぎっしり建ち並び、さらに建設中のアパートや学校とかがひしめいている。朝の6時半にはもう工事の労働者たちは集合して仕事を始めているといった感じだ。
とはいっても、社会は急に変われるものではないので、古い部分も依然健在だ。町の中心(フェリー乗り場周辺)には個人商店がぎっしりならんで、平日なのに人を押しのけて歩かなければいけないほど。生鮮品から衣服、金物屋まで生活のことならなんでも揃っているのだが、服なんかを見ると、日本の中流階級的視点からみると安かろう悪かろうのレベルで、食指が動かない。
でもおもしろいのは、伝統的な市場からあるいて2分ほどのところに、アメリカ的なショッピングモールがあって、ここも大賑わい。リオに着いた月曜日に行ったのだが、人の多さをみて今日は祝日なのかと勘違いした。アメリカでも日本でも、休日こそモールには人が集まるが、平日は閑散としているもの。そこがここブラジルは違うみたいだ。平日でも、日本の休日並みの混雑ぶりになっている。それでそんな店が入っているかというと、ブランド・ショップや、アメリカで言えば、JCPennyやTarget的な店があり、映画館も入っていて、フードコートもある。
たぶん客層が完全に分かれているのだと思う。生鮮品を買うのなら中流階級は、フェリー乗り場の真ん前にある市場にはいかず、どこか車でスーパーに行くのだろう。

それから、裸足でサッカーをする子供たちというのも、ブラジルの貧困を象徴するイメージとしてわれわれの頭に刷り込まれている。数日の滞在、しかもリオにいるので、そういう光景は見ていない。公園ではこどもはバスケットボールをしているし、サッカーボールを蹴る空き地もたくさんあるが、サッカーをしているところは滞在五日目にしてまだ見ていない。地方はまだまだ開発の投資が行き渡らず、ほんとうに子供は裸足でボールを蹴っているのかも知れない。貧困から抜け出すための手段がサッカーだというブラジリアン・ドリームみたいなものがひろく流通する前提には、どうしようもないひどい貧困が現実としてある。しかしながら1984年まで独裁政権が敷かれてい国が、わずか25年で世界中の投資家を惹きつける国になった。裸足でサッカーというイメージは今度どう変わっていくのか。

今日のところはこれぐらい。今日で学会が終わった。もうすぐ6時半だが、これから学会の手配でサンバ・バーにみんなで出かけることになっている。