学生の英語エッセイで見つけたライティング8つの間違い

学生の英語エッセイを採点して、共通して見られた間違いを整理してみました。これらは、フォーマルな英語を書くときの基本的ルールですので、知っているのと知らないのとでは、相手に与える印象が全然違います。なお、学生は全員日本の中高で英語教育を受けた日本人です。課題の内容は社会学関連です。


1他人の発言を紹介するときは間接話法を使う
例 He said that he was fortunate to have a college degree.
(NOT: “I am fortunate to have a college degree,” he said.)

新聞や雑誌などでは、取材源の発言をそのまま引用することが多いのですが、フォーマルに書くときには原則として直接話法は用いません。直接話法・間接話法は、高校で書き換え問題として繰り返し練習する事項なので、学生たちは知識としては持っているはずですが、どういうときに間接話法を使うのかという運用面については教わらないようです。


2 He arguesなどのあとに節を続ける場合はthatをはさむ
例 The minister thinks that cuts in military spending are needed.
(NOT: The minister thinks cuts in military spending are needed.)

会話や、インフォーマルな文体ではこのthatは省かれることが多いのですが、フォーマル・ライティングでは必ずthatをつけます。thinkだけでなく、argue, believe, assume, suppose, maintain, contendなど、議論関連の動詞を使うときはこのルールに従います。


3くだけたニュアンスの単語は使わない
べつに間違いではありませんが、授業の課題として書くときやビジネス上のメールなどでは、原則としてインフォーマルな単語は使いません。maybeを使うかわりにprobably, perhaps、I guessよりもI suppose/assume/thinkの方がフォーマルな感じが出ます。


4省略形を使わない
“I’m,” “it’s,” “can’t,” “you’re,” “I’ve”などの省略形を使ってはいけません。“I am,” “it is,” “cannot,” “you are,” “I have”と書くべきです。教養あるネイティブなら、たとえばフェイスブックには省略形を多用しても、仕事用の大事なメールでは絶対使いません。もちろん、大事な顧客に省略形を使ってメールを書いても意思疎通の点では問題はないのですが、言葉は意味が伝わりさえすればいいというものではありません。場面や相手に応じた書き方があります。


5 コロンとセミコロンは役割が違うコロン(:)とセミコロン(;)は使わなくても済むことが多いのですが、使えるようになればかなり便利ですし、読み手はあなたを教養ある英語を書ける人という評価をすると思います。コロンとセミコロンは、ネイティブでもかなり悩みます。私の学生も、がんばってコロンとセミコロンを使って書いていましたが、間違って使っている例を散見しました。コロン、セミコロンを始め、他の記号類の正しい使い方について知る一番手っ取り早くて、一番安上がりなのは、Merriam Webster's Guide to Punctuation and Styleを手元に置いて、必要に応じて参照することです。


6「主節+接続詞+従属節」「従属節+接続詞+主節」では、接続詞の前のカンマの有無に気をつける
例 I speak English well because I was raised in the US.
(NOT: I speak English well, because I was raised in the US)


この間違いのように、becauseの前にカンマを打ってしまう間違いはよくみます。あるいは、Because I was raised in the US.と書いてしまう間違いもよく見ます。会話を起こしたようなテキストでは、Because I was raised in the US.のようなセンテンスはよく見かけますが、あくまでインフォーマルなスタイルです。


従属節からセンテンスを始めると、
例 Because I was raised in the US, I can speak English.
(NOT: Because I was raised in the US I can speak English.)


この場合はカンマが必要です。このカンマのルールは、 becauseの他にも、if, whenなどにもあてはまります。


7 Oxford commaを使う
カンマの話が続きますが、3つ以上の項目を列挙するとき、
例 I have lived in India, China, and Russia.
と書くのが原則です。”China” と “and” の間のカンマのことを、オックスフォード・カンマと呼んでいます。I have lived in India, China and Russia.でも悪いわけではありません。実際、新聞、雑誌はカンマなしのスタイルで書きますし、イギリス人はカンマなしで書くことが多いようです。しかし、誤読を避けられるケースがあるので、このオックスフォード・カンマを使うことを薦めます。


8 “I think”を使わない会話では多用するI thinkですが、書くときは慎むべきです。読む人は、いちいちI thinkと言われなくても、書き手の意見を読んでいることは百も承知です。学術論文の場合、著者が本当に言いたいことを言うときにのみ、I think thatと書いて、そのあとに主張を述べます。ですから、授業の課題で書くときは、原則I thinkは使わず、どうしてもこのポイントだけは理解してほしいという部分をI think thatで始めるとよいでしょう。ただし使えるのは、1回か、多くても2回です。


以上、ランダムですが、学生のペーパーに共通してみられた間違いを8つまとめました。この8つを覚えるだけでも、英語として見栄えがよくなるでしょう。ライティング全般についての参考書について興味のある方は、以前の記事を見てください。