craigslist

アメリカのアパートを引き払うにあたって、小遣い稼ぎのために所有品を売った。小さいものは食器、大きいものは自動車まで、デジカメで写真を撮って、craigslistというネットの掲示板に載せた。このネット掲示板は、アメリカの都市ごとに「売ります買います」から求人、アパート、イベントなどあらゆる情報の交換場所となっている。

掲示するのは無料で、誰が掲示したかは分からない仕組みになっている。たとえばぼくの掲示した「本棚売ります」に興味がある人は、その掲示宛にメールを送ると、craigslistのサーバーがぼくのメールアドレスに転送してくれる。だから、自分のメールアドレス他の情報がネット上に野ざらしになるわけではないので、心配なく使える。

この仕組みで得もした。不用のコンピューターを売りに出したら、提示額が低すぎたのか、50以上の問い合わせのメールが来た。だからすべてのメールを無視して、後日再び掲示を出した。今度はもっと値をつり上げて。見る側では、同じ人が値を上げて再掲示したとは分からないから、こういうこともできる。反対に値付けが高すぎたと思ったら、反対に値を下げて再出品することもできる。

ぼくの場合、なるべく高い値で売ることよりも、早く売り切ることを優先したので、かなり安めの値段で本棚、テーブル、ランプ、電気製品など家にあったものほとんどすべてをcraigslistに載せた。すると、買い手はやっぱりいるもので、多くのものが掲示した次の日には売れた。買う人が売る人の家まで取りに来るというのが通常なので、ぼくとしてはさほど手間ひまはかからなかったが、それでも一番忙しい週には、30分ごとに誰かがアパートにやって来て、お目当てのものを現金と引き換えに持っていった。

不特定多数の人から、問い合わせのメールをもらうわけだから、その内容もさまざまで面白い。一番普通なのは、「**をほしいと思ってるけど、まだありますか? もしあるのならメールか電話を下さい」と書いて、自分の電話番号を知らせるパターンだ。せっかちなのは、「明日取りに行くから、何時ごろがいいですか?」と、もう自分がその物を買う権利を得たかのような書きぶり。

しつこい人も一人いた。なんどもなんども該当商品の存否についてメールを送ってくる人で、実は昨日そういうメールが来たから、このエントリーを書くことを思いついたのだ。その人は、もう二か月くらい前に掲示したコンピューターについて、いまだに「まだあるのか? 値切りは可能か?」ともうこれまで10度くらいメールを送ってきた。すでに売れたものに関しては、いちいち売れた旨の返信メールを送らずに無視したので、それに苛々しているのだろう。しかし、売りに出した物の数が多かったし、値段もかなり安めにしたために、何百というメールが来たので、いちいち返信してられなかったし、見ず知らずの人に片っ端からメールを送って自分のメール・アドレスを知らせるのは賢いことではない。

あるいは、さみしがり屋が気を紛らわしているのだと思うが、買う気もないのに、車がないからどこどこまで持ってきてほしいとか、まとめて買うからまけてほしいとか、いろいろせがむ人もいた。最初はぼくも潜在的買い手とみなして返事を書いていたが、ぼくが売りに出した他の幾つの物にも同じような懇願メールを書いてきたので、途中から無視することにした。

最後は印象に残った例。物の売買のメールだから事務的な書き方をするのが普通だが、一人だけとても粋な表現でメールを書いてきた。このメールをもらったときはもうすでにこのファイルキャビネットは売れてしまっていたのだが、そうでなかったら、この人にファイル・キャビネットを買ってもらいたかった。

if you still have the $5 file cabinet, i would like to take it off your hands, please let me know.
thanks!
rachel