「半沢直樹」を見ながら思いついた、組織で生きる人間を描いた娯楽作品リスト

最初に思い出すのが、1939年の映画「スミス都へ行く」(原題 Mr. Smith Goes to Washington)。偶然から下院議員になったスミス氏が、ダム建設に絡む不正を暴く物語。この映画でスミス議員が不正を企む人たちを前に演説を繰り広げるシーンが、半沢のキャラクターと似ている。ちなみに「スミス都に行く」は名作中の名作と言われている。

アーサー・ミラーの劇作「セールスマンの死」(原題The Death of a Salesman)は、ストーリー的には半沢ドラマと似ている点はあまりないが、サラリーマンの野望と挫折がテーマとなっている点で半沢ドラマと共通する。主人公はかつては営業成績が良かったが、歳をとるにつれて成績が落ち込んでいきながらも栄光を求め続ける。最後に主人公は自殺するのだが、半沢ドラマではこの役回りは大和田と重なる。平取締役に降格する大和田は、これからは毎日が針のむしろで、いっそのこと懲戒解雇か出向のほうがよっぽど気持ちが楽であっただろう。取締役でありながらも頭取の可能性はなくなってしまった点で、出世を人生の目標としていたサラリーマンとしては死んだも同然だ。

組織に抗う男を描いた名作として知られるのがスローン・ウィルソン作「灰色の服を着た男」(原題The Man in the Gray Flannel Suit)。この小説の主人公の組織への対決は、半沢のような真っ向勝負ではない。退役後、割と楽な職場で働いていた主人公だが、上昇志向の妻にせっつかれて、より給料の良い会社へ転職する。そこで見たのは家庭を顧みずにあくせく働く社長とイエスマンたちだった。彼の組織へのあらがい方は、半沢とは反対で、昇進を打診されたが断るというもの。翻訳はかつて発売されたが、現在は絶版の模様。リンクは映画版。原作を読みたい方はこのリンク(The Man in the Grey Flannel Suit)

組織中心の生活がもたらす孤立感と絶望を描いた名作は、リチャード・イエイツの「レボリューショナリー・ロード」(映画)。郊外に大きな一軒家を買った夫婦の物語。順調すぎるのが怖くなるのか、なぜか現状に満足できない専業主婦の妻。夫は単調な会社勤めに身をやつす。半沢とは違って、仕事に情熱を傾けられない。組織と戦うと言っても人それぞれであり、半沢のように会社の不正を許さず、父の敵をとるために常務に立ち向かうのもよいが、会社が退屈でたまらず突破口を求めてもがくぬのも組織との戦いの一つと言える。リンクは映画版。原作を読みたい方はこのリンク(Yates, Revolutionary Road)

最後は、「カッコーの巣の上で」。ケン・キージーの原作。精神病院送りされた主人公が、病院組織と戦う名作中の名作。説明は不要。映画もすばらしいが、原作の小説もすばらしい。翻訳は残念ながら絶版のようなので、図書館で探すか、英語で読むか(One Flew Over the Cuckoo's Nest)しかなさそうだ。