Merriam-Webster's Advanced Learner's English Dictionary

先日買ったメリアム・ウェブスターの学習者用英語辞書について、良いところ、改善してほしいところを書き並べた。購入を考えている人の役に立てればと思う。

  • 判型が他の学習用英語辞書と比べて、縦5ミリ,横10ミリほど大きい。他と統一してもらいたい。ちょっとのことだが、手が覚えている英語辞書の大きさではないので違和感がある。
  • 製本がしっかりしている。紙の質も好き。輝度が低く、程度のよいざらざら感のある紙を使っている。
  • しかし,文字組では一部に行間の乱れが生じている。とはいっても読むこと自体には差し支えない。
  • エントリー数は100000(語と成句)。例文は160000。エントリー数は類書と似たり寄ったりだが、160000の例文は類書を凌駕している。例文はほとんどが編集者による作成。個人的にはM−W Third International をベースに例文を選択してほしかったが、それをやると内容が人文科学に偏るし、辞書の性格上,使用語彙を限定する必要があるので致し方のないところか。でも、Cobuildは実例をそのまま掲載していながら例文が難しすぎるというわけではないので、できないことはないと思う。M-Wはそれをやるだけの充分なデータベースをまだ持っていないのかも。
  • 省略記号を使わないのはどういうわけか。他の辞書では当たり前になっている[U] [C]などの記号は、[noncount], [count]とそのまま表記している。初学者を念頭に置いた方針だと思われるが、スペースの節約が至上課題であるはずなのに、もったいない。
  • 他の辞書ならすでに当たり前になっているコロケーション情報がない。間違えやすい語法上の注意をうながす参考書的記述もない。いや、あるにはある。ごくたまにだが。たとえば、Do not confuse "too" with "to" or "two." とか。うーん。
  • 基本語彙の示し方が甘い。基本3000語の見出し部分にアンダーラインが引かれていているだけでは、学習者としては物足りない。英語の辞書で英語を勉強しようという人は3000語くらいの語彙はとっくに持っているので、既知の単語にアンダーラインを引かれていても役に立たない。他の辞書がやっているように、基本語彙を7000語くらいまで広げて3つのレベルに分けるとかの工夫が欲しい。
  • それから語義説明に使用する単語数レベル(2000語とか3000語とか)が明記されていない。たぶん2000語レベルかなあ? 使用語数情報は自分の英語力にあった辞書を選ぶ大切な情報なので明記した方がよい。
  • 巻末の付録がつまらなすぎ。

総合すると、例文がたくさんあるからそれらを読んで、使い方、語義、ニュアンスを理解してちょうだいというスタンスの辞書。語義等は黒で、例文は青で印刷されているので、例文だけを手っ取り早く読むことが可能。さらに,例文中のエントリー語にはしばしば言い換え語が示されているので役に立つ。動詞としてのquietを見ると、3つの例文が載っていて、
She tried to quiet [=calm, soothe] the crying baby./ Her comments have done nothing to quiet [=lessen] the controversy. / Unfortunately, his efforts did little to quiet [=dispel] our doubts.
それぞれに、同義語を[=......]で教えてくれる。この工夫は、語義の全体像を理解するのに役立つ。

もし,英語辞書に参考書的な要素を求めるなら、この辞書を買ってはいけない。そうでなく、アメリカ英語にこだわる人や、それなりに英語を書ける人なら,持っておいても損はないのでは。あるいは,ぼくのようにメリアム・ウェブスターが好きだからという理由で買った人にとっては、次の第二版でどう進化するのかを楽しみにに待つという密かな愉しみがあるし,アメリカの出版社が初めて出した学習者辞書なのだから歴史的価値もたぶんにある。だから,もちろんぼくは買って満足してますよ。