Merriam-Webster's Essential Learner's English Dictionary

Merriam-Websterがこういう辞書も作っていたことを先日知って、早速買ってみた。これはペーパーバック・サイズの学習者用辞書で、スペックを紹介すると、見だし語54000、イディオム15000、用例78000、となっている。奥付けに2010年に初版印刷とあり、序文には、かつて紹介したMW's Advanced Learner's Dictionaryの簡易版という位置づけであると書かれている。

昨年発売の新しい辞書だけあって、"blog"がエントリーされている。アメリカの辞書だなと感じるのは、"World Series," "Super Bowl"はあるけど、"World Cup"はないとか。たいした問題ではないが。

ロングマンやオックスフォードなどのイギリス系学習辞書に慣れた目には、このMW's Essentialは単色刷りで、字も小さく読みにくい。それに、コロケーションや使用上の注意もない。語意のレベル分けもない。ないないずくしで不親切という印象は否めない。このMW's Essentialにとって、イギリス系の学習辞書は比較の対象としてはふさわしくないことが分かる。なので、MW's Essentialは、イギリス系の学習用辞書の代わりにはならない。

この辞書はむしろ、これまで母語話者用しかなかったアメリカ系のぺーバーバック・サイズ辞書の代替として使うのが正解だろう。ためしに、perfunctoryという語を、MW's Essentialと、私が持っているペーパーバック版のRandom House Webster'sAmerica Heritageの3冊で調べた。

M-W's Essentialでは、formalというレベルを付けて、

  • "done without enthusiasm because of habit or because it is expected"

と定義して、"a perfunctory smile/statement"という用例がある。

Random House Webster'sでは

  • "1. performed merely as a routine duly 2. lacking interest or enthusiasm"と定義されていて、用例はなし。

American Heritageでは

  • "Done routinely and with little care"だけで、やはり用例はなし。

定義だけで比較すると、M-W's Essentialがとくべつに分かりやすい説明をしているわけではないが、学習者にとって大切な情報は、この単語がformalな文脈で使われるということと、"a perfunctory smile/statement"というような使い方をするということである。perfunctory smileとかperfunctory statementというように使うんだよ教えてもらえれば、こういう種類のスマイルや話は、誰でも経験したことがあるので、perfunctoryの意味をすっと身体に染み込ませることができる。

次は基本語の一つである"question"で比べてみた。MW's Essentialでは名詞としてのquestionと動詞としてのquestionが別エントリー扱いになっている。二つのエントリーに約60行を費やしている。用例は約15。一方American Heritageは名詞、動詞の区別はなく一つのエントリーにまとめられていて、全部で11行、一つの用例。Random House Webster's も一つのエントリーで11行、用例はなし。American HeritageRandom House Webster'sでは、"out of the question"というイディオムしかでていないが、MW's Essentialには10のイディオム・連語が出ている。

3冊のスペックを整理すると、American Heritage (70000 entries, 950 pages)Random House Webster's (60000 entries, 816 pages), MW's Essential (54000 entries, 1386 pages)である。MW's Essentialは収録語彙では母語話者向けの辞書には負けているが、実際問題として、54000語あれば十分である。54000の語彙を持っている人はほとんどいない。説明が丁寧な分、かなり厚いが、片手で楽に持てるし、机を占領する面積は他のペーパーバック辞書と同じなので、これも実際上は差がない。

私としては、これまで使っていたAmerican HeritageRandom House Wester'sの代わりとして使える、より使いやすい辞書ができたと思っている。母語話者用の辞書の説明では意味がピンと掴めないことも多かったので、そういうこともMW's Essentialを使うと、なくなるだろう。千円以下で買えるし、英語を仕事で使う人は一冊持っておいても邪魔にはならないと思う。