キンドルのハイライトをPCに移行する

キンドルの機能の一つに、ハイライト(highlight)がある。ハイライトとは重要部分などに線をひくことを意味する語だが、キンドルは、読者がハイライトをつけた部分を、ひとつのファイルに記録しており、ユーザーはそれを自分のPCに移行することができる。これはすごく便利な機能で、これまで読んだ本の重要部分などを手でタイプしていた人には、時間の節約と精度の大いなる向上が可能になる。

これまでの紙の本でだと、ペンで下線を引いておいて、その部分の文章をタイプする必要があった。これは時間を食う作業だし、さらに一字一句正確にタイプしておかないと、後々自分の論文などで引用するときに困るので、タイプした文章を原文とつきあわせる必要があり、神経も使う作業だった。

キンドルのハイライト移行機能を使えば、この二つがほぼ解決する。完全にではない。先週、初めてハイライト機能を使ってPCに移行をしてみた。その結果、いくつか細かいことながら不満点も分かったので以下に書いてみよう。ちなみに使った本は、The Whole Earth Discipline (Stuart Brand)である。下には、いちおう翻訳本のリンクも貼っておいた。

移行の仕方そのものはキンドルのサポートページで説明しているので、ここでは省く。実際に自分でつけたハイライトを、ワードファイルに移行してみると、書き出されたファイルは、

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本のタイトル、著者
ハイライトしたページ(印刷版)、ページ(キンドル版)、日時
ハイライトした部分
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の形で見ることになる。ハイライトした数だけ、このようなデータが時間順に書き出される。もし、複数の本を同時に読んでいて、そのつどハイライトをすれば、ファイルはたとえば、

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Book Aのハイライト情報(8月25日 18時39分)
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Book Bのハイライト情報(8月27日 9時50分)
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Book Aのハイライト情報(9月1日 18時30分)
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Book Cのハイライト情報(9月1日 19時33分)
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Book Bのハイライト情報(9月1日 20時59分)

のように、本ごとにまとめられるのではなくて(そうであれば有り難いのだが、)、ハイライトをつけた時間順に保存される。

だから、ハイライトを本ごとに整理するときは、ワード上でコピー・アンド・ペーストの作業が必要になる。

次に分かった問題点は、数としてはそれほど多くなかったが、単語と単語のスペースが消えていたり、逆に余分なスペースが入っていることがあった。“in your”であるべきなのに、“inyour”と一語になっていたり、 “The point is”でいいのに、“The      point is”のようにスペースが多すぎる例である。こういうスペースの乱れは、やはり自分で直しておく必要がある。

他には、キンドル上でイタリック体表示(書名など)は書き出し用のファイルには反映されない。なので、これも自分で書体を変えなければいけない。

予想外にうれしかったのは、印刷版(紙)でのページ数が書き出しファイルに現れることだ。キンドル上では、印刷版のページ数は出てこない(すくなくとも、私のキンドルと、私のこれまで読んだキンドル版の本では)。ただし、これには分からない点もあって、ハイライトした部分が二頁にまたがる場合も、二頁文のページ数を書き出してくれるのだろうか? 今回自分がつけたハイライトのページ数を見ると、「34−35」のような二頁にまたがるものはなかった。これには二つの解釈が可能で、今回はたまた私は頁がまたがるハイライトをつけなかったのかも知れないし、キンドルは複数頁のハイライトを正確に記録できないのかも知れない。もっとも、このことは印刷版を買えば、すぐに確かめられるのだが、一度読んだ本にまたお金を払うのは気が進まない。グーグル・ブックスでも調べたが、見たいページは公開されていなかった。だから、複数頁のハイライトの問題は、いまのところ懸念事項として保留しておきたい。(ちなみに、すべてのキンドル本が、印刷本のページ数情報をもっているのかどうかは分からない。今回使った本はたまたまページ情報を含んでいた。)

このように、小さな不具合はあるが、いちいちタイプしなくていいし、一字一句のチェックもしなくていいのだから、研究用のノート作りには大いに役立つことは間違いない。本を読むだけの効率を考えると、印刷版の方が速いし、ハイライトをつけるのも速いが、読んだ後の整理としてハイライトをPCにノートする作業を込みで考えると、キンドルで買った方が全体としては時間の節約になる(それに安い)というのが結論である。