Love & Mercy(ブライアン・ウィルソンの伝記映画)

ビーチ・ボーイズのリーダー、ブライアン・ウィルソンが、精神治療を受けていた1980年代と、ウィルソンがビーチボーイズとしての公演活動から身を引いてアルバム製作----今日名作とされているPet Sounds(「ペット・サウンズ」)として結実した----に没頭した1965年ごろのシーンが並行して語られる。

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ビーチボーイズを知らなくても、楽しめると思う。ウィルソンの復活を、二人目の妻となるメリッサが助けるというラブ・ストーリーとして観れば、心がほんわかとなる。ビーチボーイズを知っている人にとっては、「ペット・サウンズ」制作シーンに目が釘付けになるかもしれない。

「ペット・サウンズ」がポップミュージックに与えた影響は大きい。シングル中心からアルバムを単位として制作するほうへ変えたし、ロックサウンドに、クラシック音楽で使う弦楽器を用いたり、体制不服従としてロックを社会を経験した大人が聞くに値するロックに進化させた。ビーチボーイズだけがこのような変化を作ったのではないが、

音楽から離れた部分でも、ビーチボーイズはカリフォルニアのイメージを決定づけた。サーフィン・サウンドで売り出したビーチボーイズの音楽から連想するのは、砂浜、海、青い空、高速道路と自動車、芝生、そしてサーフィン。人びとはみんな笑顔で若々しく、経済的に豊かでもある、、、、カリフォルニアに特別な文化的価値を与えるのに、ビーチボーイズの音楽は貢献した。

それから、サイコセラピーもこの映画のテーマの一つである。精神科医のランディーは、ウィルソンをなるべく外部と接触させないようにし、薬漬けにし、楽曲作りを強要する。けっきょく、ウィルソンの音楽が生み出す利権がほしかったのだ。ウィルソンはランディーの監視から逃れるため、船から飛び降りて海岸まで泳ぐ場面は、個人的には一番好きなシーンだ。「カッコーの巣の上で」を彷彿させる。